はじめに
こんにちは。東信会『絆』通信10月号です。
オリンピック・パラリンピックも終わり、だいぶ涼しい気候となってきました。さて、政府は新型コロナウイルスの全国的な感染状況が改善してきていることを踏まえ、19都道府県の緊急事態宣言および8県のまん延防止等重点措置に関して、9月30日にすべて解除される事が決定しました。宣言解除後の重点措置への移行もおこなわれない様ですが、制限を全解除することによる感染再拡大は大いに危惧されるところです。ウイルス感染症が増えてくる冬に向けて感染再拡大を少しでも抑えるために、もう一度新型コロナに対する感染防止対策を一人ひとりが自覚をもって見直すべきと思われます。今回は感染経路を含めて、今一度感染防止対策のおさらいをしたいと思います。
令和3年 吉田智彦
新型コロナウイルスは空気感染する?
人から人へと感染していく感染症は、ウイルスや細菌によって感染経路は異なります。
主な感染経路として
- 飛沫感染
- 空気感染(飛沫核感染)
- 接触感染
- 経口感染
などがあります。
飛沫感染とは
病原体を含んだ鼻水や唾液、痰などの飛沫(5マイクロメートル以上)が、感染者の咳やくしゃみなどで飛び、粘膜に付着することで感染します。飛沫が飛ぶ範囲で感染が起こるので、距離、時間、障害物の有無によって感染リスクが変わります。距離を長く、接触時間を短く、障害物を作れば、感染リスクは下げることができます。条件にもよりますが、一般的に「2m以内に30分程度、同じ場所」にいれば、感染する可能性があります。逆にいえば、2m離れて、数分のみの接触で、目・鼻・口などの粘膜にくしゃみや咳による飛沫を浴びなければ、感染リスクは低くなります。同じ部屋でもマスクをしていたり、衝立が一つあれば、ある程度感染拡大の可能性を下げることができます。
空気感染(飛沫核感染)とは
サイズが大きく重い粒子ですぐに落下してしまう飛沫感染とは異なり、空気感染は、咳やくしゃみで飛んだ飛沫の水分が蒸発したあと小さく軽い飛沫核(5マイクロメートル以下のエアロゾル)となり、病原体が長時間空気中を漂い、その空気を吸い込んだ人が感染します。2m以上離れていたり、衝立を立てたり、感染者がその場を離れたりした後も、同じ部屋にいるだけで感染する可能性があります。空気感染するのは、結核、はしか、水ぼうそうなど感染力が強い感染症に多く見られます。
接触感染とは
皮膚や粘膜の直接的な接触や、ウイルスがついた物に触れた手や物を介して感染が起こります。ウイルスが付着した物を触ってウイルスがついてしまった手で、目・鼻・口のあたりを触ることで感染します。物についたウイルスが感染力を持っているかどうかは、ウイルスの種類や、温度、湿度、付着した物などの条件によっても異なります。ウイルスは細胞がないと増殖できないので、感染者から離れたウイルスは、数日内に感染力が下がります。プール熱やインフルエンザ等がこの感染経路で感染します。
経口感染とは
感染動物の肉を食べることで感染するBSEなどや、糞便で汚染された水や生牡蠣などを経口摂取することで感染するものです。O157やノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎などがあります。
★新型コロナウイルスの感染経路に関しては、感染予防対策を考えるうえでとても重要な問題です。新型コロナ感染症のパンデミック(世界的流行)が始まった当初から現在までで、感染経路に関する見解も徐々に変わってきています。パンデミック当初の2020年3月、世界保健機関(WHO)は『特定の状況や環境(気管内挿管などの医療行為)』に限って空気感染がおこりうる、と発表しましたが、一般的な経路とはせずに、公式ツイッターでは『新型コロナ感染症は空気感染ではない』とはっきり否定していました。しかし、1年たった今年4月に更新されたQ&Aでは、新型コロナウイルスはくしゃみや呼吸のときに口や鼻から出る粒子で広がり、この粒子は『大きな飛沫から小さなエアロゾルまで様々』と明記され、飛沫核も一般的な感染経路の一つ(=空気感染もおこりうる)と認めています。一方日本では、厚生労働省の今年9月版「新型コロナウイルスの『いま』に関する11の知識」でも主な感染経路は飛沫感染と接触感染としていて、空気感染についての記載はありません。しかし現実的には、私たちの認識として、空気感染も想定した感染対策をとるべきと思います。
「厚生労働省では、新型コロナウイルスの変異の状況を監視しています。世界保健機関(WHO)や専門家とも情報交換を行い、国内の監視体制を強化しています。個人の基本的な感染予防対策は、変異株であっても、3密(密集・密接・密閉)や特にリスクの高い5つの場面の回避、マスクの適切な着用、手洗いなどが有効です」厚生労働省HPより抜粋
ワクチンのブースター接種とは?
ブースター(Booster)は英語で「増幅器」などの意味。予防接種では、体内で1度つくられた免疫機能が、再び抗原に接触することで、より免疫の機能が強まることを、「ブースター効果(追加免疫効果)」といいます。免疫機能を担う免疫細胞は、一度侵入した抗原を記憶しているため、記憶にある抗原が再度侵入したときは、より強力な抗体をつくり出そうとするのです。
新型コロナワクチンにおいても、3回目のワクチン接種を追加することで、接種後に低下した免疫効果を再び押し上げることが期待されます。ただし、新型コロナワクチンは具体的にどのくらいの期間、免疫力が持続するかはまだわかっていません。米政府は9月24日、ファイザー製ワクチンの2回接種終了から6か月以上過ぎた65歳以上の人等に、3回目の接種を始めると発表しました。接種対象者をめぐっては専門家の間でも意見が分かれましたが、18歳以上については重症化しやすい持病がある人や、感染リスクが高い医療関係者や教師らに限られることになりました。今後はモデルナやJ&J製ワクチン接種者にも対象を広げる可能性にも言及しています。ゆくゆくは日本でも、3回目のブースター接種が必要になるかもしれません。