本記事では漢方ついて、北里大学東洋医学総合研究所の花輪壽彦名誉所長、名誉教授のアドバイスを元に詳しく解説していきます。
万人に合う訳ではありませんのでしっかりと診察することが大切です。
世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院(旧:新宿南リウマチ膠原病クリニック)では保険診療で花輪先生の診察を受けることができます。
漢方薬について知ろう!②
煎じ薬のつくり方
次に煎じ薬のつくり方についてです。
まず、用意するものは煎じるための容器です。鉄鍋や銅鍋は生薬の成分を変質させることがあるので、土瓶がベストです。しかし、ひび割れすることがありますので、心配ならば耐熱ガラス製ケトル、ステンレスやアルミ製の小鍋にすると良いでしょう。最近ではコーヒーメーカー型の自動煎じ器も販売されています。
これらの容器に漢方薬と水を入れて煮立たせます。このときの漢方薬の分量と水の量は、医師や薬剤師の指示を守って必ず適切な量にします。1回につくる量は、通常は1日にのむ量(=コップ3杯分)にします。
火加減は必ず弱火にします。そうしないと成分が十分抽出されません。元の半分の量になるぐらいまで、だいたい40〜60分ほど煮詰めていきます。
煮詰まってきたらガラス容器にガーゼをかぶせて濾します。1回分ごとに小分けし、残ったら冷蔵庫で保存します。
煎じ薬ののみ方には、温かいうちに服用する温服と、冷ましてから服用する冷服があります。いったん冷えてしまったら電子レンジなどで温めてのみます。もう一度火にかけて温めると、漢方薬の成分が変質することがあるので、水分が飛んで煮詰まらないように注意しましょう。
漢方薬ののみ方
漢方薬は西洋薬と比べても極めて安全性は高いのですが、薬である以上、正しい方法でのむことが必要であることは言うまでもありません。
まず、服用する時間です。西洋薬は食後にのむのが良いとされていますが、漢方薬は食前または食間の空腹時にのむのが基本です。食前とは食事の30分以上前のこと。食間とは食事中ではなく、食事と食事の間のことで、食後およそ2時間後が目安です。
漢方薬の成分の多くは腸内細菌によって吸収されやすい形に変えられるため、食前や食間などの空腹時のほうが成分はすみやかに腸内に届くので、効果が発揮されやすくなるのです。
のみ忘れたときは前にのんでから4時間空ければのむことができますので、次の食間まで待つ必要はありません。毎日のむ時間を決めておくと良いでしょう。
エキス剤は水か白湯でのむようにします。冷水は胃を刺激してしまうのでおすすめできません。また、お茶やコーヒー、スポーツ飲料などと一緒にのむと、胃の中で反応して薬効成分が変化したり、減少したりするのでやはりおすすめできません。
服用後にお茶やコーヒー、清涼飲料水の類を摂るのは30分の間隔を空けるほうが望ましいと言えます。また、西洋薬も併用してのまなければならないときは、漢方薬の服用後1時間は空けてから服用してください。
漢方薬は、のみ続けていくと効果が現れ、症状が改善されていきますが、改善されたからといって独自の判断で服用をストップさせるのはよくありません。服用を急に中止すると症状がぶり返すことがあるからです。
漢方薬の服用期間
漢方薬には即効性がないというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、そんなことはありません。のんですぐに改善が見られる場合もあれば、煎じ薬のにおいを嗅いだだけでも喘息が良くなったという例もあります。
しかし、通常は少なくとも2週間は服用し続けないと効果は得られにくいものと考えてください。薬によっては4週間ほどの服用期間が必要なこともあります。なぜなら、配合された生薬や病気の症状によって効き目が現れる期間が異なるからです。
たとえば「葛根湯」は、服用してから10分もすれば体が温まってくるほど即効性がありますが、体の冷えを根本から改善して維持していくには少なくとも数日から10日ほどの期間を必要とします。
逆に1か月〜2か月たっても症状が改善されない場合は、「証」の判断が間違っていたり、処方が合っていなかったりすることがあります。そうした場合は担当の医師に相談しましょう。また、服用を始めて症状が強まったり、別の症状が出てきたときもすぐに相談しましょう。
症状が改善されてきたら3回の服用を2回に、2回の服用を1回にするという具合に、医師は徐々にその量を減らすように指導します。
成人の場合は体質が出来上がってしまっていますから、一定期間漢方を服用したからといって劇的に症状が改善されるわけではありませんし、症状の元となっている生活習慣を改めないかぎり、症状がぶり返すことが多いのです。ですから、成人の場合は、量は減らしても長くのみ続けることで体質が改善された状態を維持できるようにします。
慢性疾患を漢方で治療していく場合は、一定期間服用すると症状が軽快していくのが普通です。その際、軽快しただけなのに「治った」と自分で判断を下すのは間違いです。症状が軽くなるということは「証」が変化したということしたということですから、その「証」に合った処方に変えなければなりません。その際は医師の指示に従ってください。
症状が軽くなったからといって決して自分の判断で服用をやめたり、量を減らすことのないようにしてください。
漢方薬にも副作用はある
漢方薬は副作用が少ないと前述しましたが、漢方薬の副作用については、残念ながら誤解が多いのが現実です。一部のメディアで副作用の情報が流されたことによって、不安を抱く人もいるようです。
前述したとおり、漢方薬は2000年以上も昔から無数の処方がつくられ、有効で安全な処方のみが残されてきているだけに、極めて安全性の高い医薬品です。漢方薬が適切に使われた場合は、西洋薬のような副作用の心配が少なく、「薬をやめると再発する」というケースもほとんど見られません。
とはいえ、薬である以上、「不適切な服用」による副作用、あるいはアレルギー反応等は当然、起こりうることです。漢方を取り扱う医師は、どのような状態の患者さんに、どのような漢方薬が有効かを十分吟味して処方しますが、「不適切な服用」によって時に消化器症状や浮腫(むくみ)、肝障害、間質性肺炎などの副作用が起こることがあるのです。漢方の専門家は副作用に対する十分な知識と対処法を知っていますので、不安があればぜひ問い合わせてください。
副作用ではない「瞑眩」
副作用ではありませんが、漢方には西洋薬をのんだときの副作用と同じような「瞑眩」という現象が起こることがあります。漢方薬の服用し始めのときに、人によって一時的に具合が悪くなることがあるのです。
瞑眩は漢方薬を服用後、2〜3日から1週間の間に症状が悪化したり、それまでなかったような症状が出たりします。具体的には「頭痛、腹痛、下痢、嘔吐、めまい、浮腫、じんましん、鼻出血、子宮出血」などです。
これらの瞑眩の現象は、薬の効き始めに出るもので、その人に合っている処方であっても起こることがあります。瞑眩が起こってもそのまま服用を続ければ症状は改善されるのですが、一次的に症状が悪化するため、患者さんが知らなければ副作用と断じてしまうかもしれません。瞑眩は漢方薬が患者さんの自己治癒力をゆり動かしている時におこる現象です。副作用との区別が難しいのでこうした現象が起こったときは医師に相談しましょう。
とはいえ、瞑眩と副作用は同じものではありませんから、見分け方があります。瞑眩は現象が現れるまでが副作用よりもずっと早く、副作用と比べて症状が激しいのです。
しかし、症状が長く続くようであれば副作用である可能性があります。症状が出たときに自己判断するのは難しいので、今までになかったような症状が出てきたときにはやはり担当の医師に相談するのが良いでしょう。
医師に瞑眩と言われたら服用を中止しないで続けるほうが良いのですが、どうしても苦痛でしかたがないというときは服用量を半分くらいにして続けるようにするのが一般的です。
いつまでのみ続ければいいの?
多くの場合、漢方薬をのみ始めてから2〜4週間でなんらかの変化が現れるようになるため、この期間中にまったく変化がなかったら、同じ処方を半年、1年と続けることはありません。
悪化した場合はもちろんですが、4週間以上たっても何も変化が見られないときには担当の医師に相談の上、漢方薬をのむのをやめるか、のむ薬を替えることが必要になってきます。
「症状が改善されない」という場合には2つの状況が考えられます。実際に症状が変わっていない場合と、実際には改善されているのに本人が改善されないと思いこんでいる場合です。
「症状が改善されていない」と感じる原因は、これまでの西洋薬と同じように漢方を捉えているということが考えられます。
漢方薬が効果を発揮する、冷え症や肩凝り、頭痛などの「不定愁訴」は西洋医学では病気と認識しません。これらの症状は患者さんの感覚的なものも大きいからです。冷えや肩凝りからきている頭痛に悩んでいる患者さんの場合、漢方薬をのみ続けた結果、「頭痛は良くならないが、冷え症と肩凝りはいくぶん良くなった」ということがあります。このような場合は、その処方が患者さんに合っていると考えられるので、頭痛が治らないからといってすぐに服用を中止する必要はないということなのです。
このように、客観的に見れば回復傾向にあるのに本人が良くならないと感じているケースが多く見られるので、症状が変化したかどうかを見極めるために、漢方薬を服用する前の症状を記録しておくことが大切です。
逆に、重要な疾患があるわけではないけれど、体調を維持するために漢方薬をのんでいたというような場合には、十分に体調が良くなったと感じることができれば、漢方薬の服用をやめても良いと言えるでしょう。