リウマチは放置すると関節が変形します
一般にリウマチと呼ばれている病気の正式名称は「関節リウマチ」と言います。医学的にはリウマチは関節や滑膜、靭帯、軟骨いった運動器に炎症、痛みが起こる病気の総称です。結合組織の炎症に伴う全身性疾患である膠原病のグループに分類されます。その中でも代表的な疾患である関節リウマチは、2018年厚生労働省のデータによると日本に80万人も患者がいると言われています。しかし、治療法や患者が実際にどのような生活を送っているのかなど、病気の実態はあまり知られていないのが実情です。そのためわからないが故の恐怖からリウマチと診断された時にショックを受ける人が多いのです。
リウマチはどんな症状か?
実際にどんな症状があるのかというと手や足の指、肘や膝などの関節に炎症が起こることで腫れて熱を持ったり痛んだりします。病気が進むと炎症によって軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、関節が変形していきます。さらには炎症が関節にとどまらず肺や腎臓、血管など全身に広がることもあります。
正常な手
リウマチが進行した手
このように列記すると怖い病気のように思えます。そのため何の治療法もなかった頃は、一度発症したら一生治らない病気、すなわち不二の病だと思われてきました。しかし、それはリウマチのことが何もわからずに手も足も出せなかった頃の話です。今はリウマチのことが詳しく知られるようになり、次第に対処法もわかってきました。
関節リウマチという病名について
国際的な病名は「Rheumatoid Arthritis」と言います。英語ではこの名前のどこにも慢性を示す要素は入っていません。日本では慢性関節リウマチと言う病名がついていましたが、リウマチ治療に生物学的製剤が登場しパラダイムシフトが起きたことによって症状の進行を抑え込むことができるようになったことなどを受けて、2002年に病名から「慢性」が外されて「関節リウマチ」となったのです。
そこでようやく日本もリウマチ学会を挙げて、決して慢性ではない病気として位置づけて治療・サポートしていくことになりました。放っておけば骨が破壊され関節が変形するような状況にまで進行する可能性もありますが、早くから治療を開始し症状をコントロールすることができれば骨の破壊を止め、関節変形まで進行させない病気であるという認識を新たに明確に打ち出したのです。
関節は変化し、炎症が起こる仕組み
リウマチという病気は主に関節の滑膜に起こる炎症です。炎症が起こるメカニズムを表したのが下図です。
関節内で炎症が起こり、それが続くと関節の周囲を囲んでいる滑膜が腫れて、やがて軟骨や骨を破壊していきます。
リウマチだと医師から診断を受けた時、大抵は自己免疫の異常によって炎症が起こってきて関節が壊れる病気といった説明を受けるはずです。本来なら体を守るはずの自己免疫が正常であればサイトカインが過剰分泌されることはないのに、何かしらの理由で自己免疫が異常を来している状態となってしまいます。
発症原因は今だに特定されていませんが、ある特定の遺伝子がリウマチの原因となるわけではなく、遺伝子配列の個人差(遺伝子多型)と後天的な要素が組み合わさることでリウマチにかかりやすい状態ができると考えられています。
例えば、リウマチの患者は免疫に関連する遺伝子の中でも「HLA-DR4」という遺伝子型を持った人の割合が高いことが明らかになっていますが、実は健康な人でも40%程度の人がこの遺伝子型を持っています。また、この遺伝子型を持たなくてもリウマチを発症する患者もいます。HLA-RD4は、リウマチを発症しやすくする数多くの要因の一つに過ぎないということです。
遺伝子的因子にウイルス感染などの環境因子が加わることで免疫に異常が生じると考えられています。免疫は通常、体内に侵入したウイルスや細菌といった異物とそれらに感染した細胞などを攻撃して排除する働きをします。
ところが免疫に異常が生じることで誤って正常な細胞や組織を攻撃してしまい、炎症が引き起こされるのです。なぜ自己免疫が異常な状態に傾いたのかは、遺伝的因子と環境因子の2つに分けて考える必要があります。遺伝的因子とは体がもともと持っている因子です。持って生まれた体質的に自己免疫を見出しやすい人がいます。一方、環境因子として考えらているのがウイルスや細菌による感染、出産、ケガ、喫煙、ストレス、過労などです。感染の中には歯周病、歯肉炎も含まれます。穏やかだった自己免疫の状態が、それらの外因によって乱されて炎症が起きていると考えられます。これらの外因とリウマチとの関係はかなり明確にわかってきています。
関節リウマチとタバコの関係について
タバコの悪影響は以前から指摘されています。喫煙をしている人としていない人では喫煙者の方が発症率は高くなります。アメリカでは喫煙によるリスクが注目されていて、特に血縁者にリウマチ患者がいるという遺伝的因子を持っている人に喫煙の経験があると発症リスクは5倍になると報告があります。(日本喫煙科学会2013年「喫煙:関節リウマチの確実なリスクファクター」)予防や発症した人が、これ以上悪化しないようにするには、禁煙や口腔ケアを行う、ウイルス感染対策をする、ストレスを溜めないようにするという方法は有効です。
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