「関節が痛む」「朝起きたときに手がこわばる」「冷えてつらい」——そんな症状に悩んでいませんか?
リウマチは、単なる関節の病気ではありません。冷えやむくみ、体のだるさといった、日常生活に影響するさまざまな不調を引き起こします。
こうした症状に対して、薬による治療だけでなく、漢方や東洋医学のやさしいアプローチが注目されています。
本記事では、リウマチの原因や治療法をわかりやすく解説しながら、漢方を取り入れた体質改善の方法について、患者さんやご家族にも理解しやすい形でご紹介します。
はじめに:リウマチと「冷え」「むくみ」「だるさ」のつながり
- リウマチは、関節の腫れや痛みだけでなく「冷え」「むくみ」「だるさ」といった全身症状を引き起こすことがあります。
- これらの症状は、体の免疫バランスの乱れや血行不良とも関係しています。
- 西洋医学の薬物治療に加え、漢方による体質改善というアプローチも注目されています。
リウマチと聞くと、「関節が変形する病気」「手足が痛む病気」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、関節の腫れや痛みに加えて、「身体の芯まで冷えるような寒気」「夕方になると足がパンパンにむくむ」「朝起きると体が鉛のように重い」など、全身のさまざまな不調が現れます。
こうした症状の背景には、免疫の異常だけでなく、血液や水分の巡りが滞っていること、さらには「冷え」によって内臓の働きが弱まっていることも関係しています。つまりリウマチは、単に「関節の病気」ではなく、「体全体の巡りの乱れ」が引き金となって起こる病気でもあるのです。
リウマチとはどんな病気?
- 自分の体を守るはずの免疫が、誤って関節を攻撃してしまう病気
- 関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなどが特徴
- 女性に多く、30〜50代での発症が多い(男女比は約1:4)
リウマチ(関節リウマチ)は、自分の免疫が誤って自分自身の関節を「敵」とみなして攻撃してしまう病気です。通常、免疫は外からのウイルスや細菌から身体を守る働きをしていますが、この病気ではその免疫が暴走してしまい、関節の内側(滑膜)に炎症が起き、徐々に骨や軟骨が壊されていきます。
特に多く見られるのが、朝起きたときに手指がこわばって動かしにくい「朝のこわばり」や、手や足の関節に左右対称で起こる腫れ・痛みです。進行すると関節の変形や可動域の低下が起こり、日常生活にも大きな影響を与えます。
西洋医学によるリウマチ治療の基本
- 抗リウマチ薬(DMARDs):進行を抑える薬
- ステロイド:炎症を一時的に抑える
- 生物学的製剤:免疫の働きをピンポイントで抑える
- 定期的な血液検査と副作用管理が必要
リウマチの治療では、西洋医学による薬物療法が中心です。代表的なのが「抗リウマチ薬(DMARDs)」で、免疫の異常な働きを抑え、関節の破壊を防ぐ作用があります。早期に投与することで、病気の進行を大きく抑えることが可能です。
炎症が強く出ているときには、「ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)」を短期間使用して、痛みや腫れをコントロールすることもあります。また、最近では「生物学的製剤」と呼ばれる新しいタイプの薬も登場しています。これは、免疫の異常に関与する特定の分子(サイトカインなど)をターゲットにしてピンポイントで抑える薬です。
東洋医学・漢方の視点からみたリウマチの原因
- 「気・血・水」の巡りの乱れが根本原因
- 冷えや湿気(湿邪)が体にたまり、関節に影響
- 体質に応じて症状の出方が異なる
東洋医学では、リウマチのような関節の痛みを「痺証(ひしょう)」と呼びます。これは「風」「寒」「湿」といった自然界の邪気が体内に入り込み、関節や筋肉に停滞することで生じると考えられています。特にリウマチでは、「寒邪」や「湿邪」による影響が強いとされ、関節の冷えやむくみ、重だるさを引き起こす原因とされています。
また、東洋医学では「気・血・水」の3つの要素が体内をスムーズに流れていることが健康の基本とされており、この巡りが滞ると不調が生まれると考えられています。リウマチのような症状は、特に「水」が余っていたり、「血」がうまく流れていなかったりする状態が多く、これが関節内での痛みや腫れ、可動域の制限などにつながるとされています。
リウマチに使われる代表的な漢方薬とその特徴
漢方薬名 | 適した症状・体質 |
---|---|
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) | 水太り・むくみ・疲れやすい体質に |
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) | 手足が冷えて痛む、慢性的な関節痛に |
薏苡仁湯(よくいにんとう) | 関節の腫れ・熱感がある人に |
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) | 冷えによるしびれや関節痛に |
漢方では、症状の原因を「体の巡りの乱れ」や「冷え」「湿気」などに着目し、それぞれに合った処方を行います。上記の漢方薬は一例ですが、どれもリウマチの方によく使われる代表的な処方です。
たとえば、「防已黄耆湯」は、体内に余分な水分がたまっている「水滞体質(すいたいたいしつ)」の人に処方されやすく、むくみや汗かき、疲れやすさを改善する働きがあります。また、「桂枝加朮附湯」は、手足が冷えて痛むタイプの関節痛に適しており、体を内側から温める作用が強いのが特徴です。
漢方治療のメリットと注意点
- 体質から整える“根本治療”が可能
- 症状が複数ある場合にも対応できる
- 西洋薬より副作用が少ないが、即効性に欠ける場合も
- 長期的な継続が効果を左右する
漢方治療の大きなメリットは、「体質を根本から改善していく」という点です。たとえば、リウマチによる関節の痛みだけでなく、「冷えやすい」「疲れやすい」「むくみやすい」といった体全体の傾向にもアプローチできるため、トータルな体調改善を目指すことができます。
さらに、漢方は複数の症状に同時に対応できる処方が多く、たとえば「関節が痛く、さらにお腹の調子も悪い」という人にも一つの薬でバランスよく働きかけることが可能です。このような包括的な対応は、西洋医学にはない魅力の一つです。
リウマチを悪化させない生活習慣の工夫
- 手足を冷やさないような衣類を選ぶ
- お風呂でしっかり温める(38〜40℃、15分以上)
- 冷たい飲み物を避け、温かい食事を意識
- ストレス対策(瞑想・深呼吸・趣味の時間)
- 睡眠時間は6〜8時間を目安に
リウマチの症状を悪化させないためには、日常生活での「ちょっとした心がけ」がとても大切です。特に冷えとストレスは、症状の悪化を招く大きな要因とされており、漢方でも「冷えは万病のもと」「気が滞ると病が生じる」といった考え方が根付いています。
まず、冷え対策としては、手首・足首・お腹・首元などをしっかり温める衣類選びが基本です。冬だけでなく、夏でもエアコンの冷気で体が冷えることがあるため、室内でも靴下やカーディガンを活用しましょう。また、湯船にしっかり浸かる習慣も重要です。シャワーでは体の芯まで温まらず、関節の血流が滞りやすくなります。
漢方治療の始め方と医師選びのポイント
- 「漢方内科」や「東洋医学専門医」への受診がおすすめ
- 保険適用の漢方も多数ある(ツムラなど)
- 問診では体質や生活習慣も細かく聞かれる
- 継続することで効果が現れる
漢方治療を始める際には、まず「漢方を専門とする医師」または「東洋医学に詳しい薬剤師」がいる医療機関・薬局を選ぶのが理想的です。最近では、病院の中に漢方外来を設けている施設も増えており、保険診療内での処方も可能なケースが多くなっています。
診察では、現代医学のように数値だけで判断するのではなく、「顔色」「舌の状態」「脈の質」「冷えの有無」「便通の傾向」など、さまざまな視点から体の状態を総合的に見て診断が行われます。これは東洋医学特有の「四診(ししん)」と呼ばれる診察法に基づいており、患者本人も気づいていなかったような体質の乱れが見つかることもあります。
漢方と西洋医学の併用はできる?
- 多くのケースで併用可能(ただし医師に相談を)
- 漢方が副作用軽減や体調管理に役立つことも
- 併用による相互作用には注意が必要
リウマチ治療では、漢方と西洋医学を併用するケースが増えています。たとえば、西洋医学の薬で炎症を抑えながら、漢方薬で冷えやむくみ、体のだるさなどを改善するという形です。双方のメリットを活かすことで、よりバランスの取れた治療が可能となります。
特に、漢方薬は副作用が比較的少ないことから、「薬の副作用で体調が不安定になっている」「体力が落ちてしまった」といった人に対して、体調を整える目的で併用されることがあります。たとえば、胃腸の調子を整える漢方を併用することで、薬の飲みやすさや吸収効率が上がることもあります。
まとめ|冷え・むくみ・だるさに、やさしい東洋医学の力を
- リウマチは関節の痛みだけでなく、全身の不調も伴う
- 西洋医学の薬に加え、漢方による体質改善という選択肢もある
- 自分の体質に合った漢方薬を選ぶことが重要
- 継続的なケアと生活改善で、症状が緩和される可能性も高まる
漢方は、リウマチのつらさを少しでも和らげたい方にとって、頼れる選択肢のひとつです。冷えやむくみ、だるさを感じている方は、一度、漢方的な視点からのアプローチも検討してみてはいかがでしょうか。あなたの体質に寄り添った、無理のないケアがきっと見つかります。
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