リウマチは数値単体では診断することはできない
リウマチの検査項目の数値単体ではリウマチ化どうかの診断をすることはできず、血液検査、画像検査、触診のほか、これまでの経過や症状を詳しく診ていかないとリウマチではないのにリウマチでないのにリウマチの治療を始めることはできません。ですから、誰が診察しても正しく診断できる基準が不可欠です。以前は米国のリウマチ学会による分析基準を使っていました。診断基準の項目は7つしかなく、そのうち四つが該当すればリウマチと診断されていました。これではかなり進行していないと中々リウマチと確定しにくいという問題がありました。診断基準を満たさないために経過観察をしているうちに悪化し、その時にはすでに関節・骨破壊が進行しまっていたということも少なくありませんでした。
関節・骨破壊を止めるなら、なるべく早い治療が必要です。そのための治療がなかった時代はともかく、画期的な治療薬がある今ではその診断基準では間に合いません。そうした理由で2010(平成22)年に米国リウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会が共同で診断基準を打ち出しました。スコアが6点以下の場合に関節リウマチと診断します。
この診断基準によって以前のような早期リウマチの見落としは格段に減りました。とはいえ、基準を機械的に当てはめるだけでなく、多くの初見から総合的に判断し、正確な診断が行われることが必要です。リウマチと間違いやすい病気は次の通りです。検査を進めている中で似た病気があるときは適宜識別するための詳しい検査も実施しています。
リウマチの起こりやすい部位と特徴
関節リウマチを発症すると、全身のさまざまな関節に腫れや痛みなどがあらわれます。特に手足や肩、膝、股関節など日常生活の動作で動かす多くの関節に病変が起こるのが特徴です。関節の痛みや変形が進行すると生活にも支障が生じてきます。また、各部位で関節リウマチも症状や治療法、治療効果のあらわれ方には特徴があります。
手の場合
比較的早い段階から症状が出やすいのは手の指や手首の関節です。特に指の第二関節や第三関節はほとんどの発症者に腫れや炎症が見られます。手指は骨の破壊が進んでくると脱臼したりずれたりしやすく、リウマチ特有の変形を起こします。
- 尺側偏位
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親指以外の4本指の付け根から先全体が小指側に曲がる。
- ボタンホール変形
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指の第二関節が強く曲がり、第一関節が反る。
- スワンネック変形
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ボタンホール変形と反対に指の第二関節が反り、第一関節が曲がる。指が曲がりにくくなるので掴んだり、握ったりといった動作が難しくなる。
- ムチランス変形
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指の骨が破壊されて溶け、短くなって変形する。
手指や手首は薬物療法によって、患者に合う治療薬があれば症状が改善されているのかどうかの判定もしやすい部位ではあります。しかし、一度変形が起きれば自然に元の形に戻ることは残念ながらありません。日常生活でできるだけ関節の機能を落とさないように作業療法を実施したり、補助器具をつけて関節の負担を減らしたり、変形の進行を遅らせるための治療を実施していきます。手はとても人目に触れやすい部位ですので、近年は変形改善を目的とした手術を受ける人も増えつつあります。
足の場合
足の指あるいは足首は早い段階からリウマチの症状があらわれやすい部位です。リウマチの炎症によって足裏のアーチ部分を支える関節が緩んでしまうといわゆる扁平足になるほか、親指が付け根から小指側の方に大きく傾いた形になる外反母趾にもなりやすいです。親指以外の足の指が曲がって浮いたようになってしまう槌指(ハンマートゥ)や足裏に痛みを伴うタコができてしまうことがあります。足は他部位のどの関節よりも全身の体重がかかりますので、薬の効きがやや劣るのも特徴です。変形が始まった時はリハビリや器具を使った治療でカバーしていることになります。手と同じ様に変形を改善するための手術を受けるという選択肢もあります。
膝の場合
膝の関節は全体からみて6割くらいの患者に症状が出てるとされています。体の中でも最も大きな関節でありその分、滑膜も多いのでもしも炎症が起こると膝全体が大きく腫れ上がってしまい、強い痛みを伴うことが多くなります。膝に痛みがあると歩行や移動が難しくなり日常生活が大きく制限されてしまいます。また、そのために歩かずにいると膝の周囲の筋肉が衰えてきてさらに歩行が難しくなっていく悪循環い陥ってしまいがちです。
膝は薬物療法で効果が出やすい部位で、早ければ投薬後数日で痛みが取れていくケースもあります。薬物療法を続けながら、筋力や関節機能を維持できるようにリハビリでトレーニングも取り入れていく方法があります。膝の骨の破壊が進んでしまった場合には、人工関節に置き換える手術という選択肢があります。
股関節の場合
股関節は初期に症状が現れることが少ない部位です。発症してから3〜10年ほど年げつが経ってから、1〜2割の人に影響が現れてくるとされています。膝関節で炎症が始まると、急激に関節破壊が進んでしまう副作用の血管炎によって大腿骨壊死は起きることもあります。膝関節で薬物りょうほうが難しい場合には人工関節にする手術をします。
肩・肘の場合
肩は膝と同じく6割くらいの人に症状が現れます。方は可動域の広い関節のため、腫れや痛みが強くなってくると日常生活の大きな支障が出ます。膝の関節は4割弱ほどの人が発症し、骨の破壊が進むと肘が曲がったまま伸びなくなります。
これらの治療は薬物療法とリハビリが中心になります。骨の破壊が進んだ時は手術も選択肢になりますが、肩の人工関節は膝や股関節と比べると治療成績が劣っていることに留意してください。
脊椎・頚椎の場合
背骨内部の首の部分に当たる頚椎にも病変が起こることがあります。症状が出る頻度は5割ほどに上ると言われています。特に頭蓋骨のすぐ下の位置にある第一頚椎と第二頚椎の間の部分が破壊されると、首を通る神経が圧迫されてしまいます。その結果として神経障害が出るほか、時には呼吸障害などで命に関わる事態に陥ることもありますので注意が必要です。薬物療法とリハビリのほか、首を包むようなコルセットなど器具を装着して関節の負担を減らしていく保存的治療をすることが多くなります。
最後に
これらの関節リウマチは症状や現れ方も多種多様です。発症した後の経過もさまざまなパターンがあります。手指や足指など小さな関節だけに症状があって、早期に治療を始めた場合ならば近年では治療の予後はよても良くなってきています。薬が効けば痛みなどの症状も収まり、関節リウマチとは思えないような健康な日常生活を送れるようになる人も増えているのです。
一方で、膝など大きな関節でいきなりリウマチの症状が出た人や、中高年になって急に発症する人の中には薬が効きにくく、数ヶ月から1年くらいといった短期間で急激に症状が悪化してしまうこともあります。
骨が急速に溶けていってしまう、ムチランス型と言われるようなタイプも急速に症状が悪化していく例が多くなっています。
リウマチになった患者の最も多い経過としては、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら10年、20年といった長い期間をかけて徐々にリウマチが進行していくケースです。治療を開始して数年後に一旦症状が良くなるケーづもありますが、何年かしてからリウマチの活動性が高まってしまうこともありますので油断は禁物です。早期発見と併せて、根気よく治療を続けていくことが重要です。