漢方薬とは?(体質に合わせた自然の薬)
漢方薬は、中国や日本で発展した東洋医学に基づく治療薬で、患者さん一人ひとりの体質や症状のパターン(これを「証〔しょう〕」といいます)に合わせて処方されるのが特徴です。

西洋医学のように「同じ病気なら同じ薬」を出すのではなく、脈や舌、全身状態を診てその人に合った生薬(植物や鉱物など自然由来の薬草成分)を組み合わせることで、体のもつ自然治癒力を引き出し、症状の改善につなげます。複数の生薬を煎じたりエキス化したオーダーメイドの薬とも言えるでしょう。
また漢方医学は、更年期のほてりや不眠、原因のはっきりしない体の不調など、西洋医学的には「異常なし」と言われがちな症状にも対応できる強みがあります。実際、月経や更年期に伴う不調、アレルギー体質、メンタル面の不安、不眠、皮膚トラブル、冷え症、肩こり、便秘、むくみ…といった幅広い症状の改善に漢方薬が使われており、「未病」(病気ではないが調子が悪い状態)のケアにも役立てられています。
現在では医療用として約148種類の漢方エキス製剤が保険適用となっており、病院でも西洋薬と併用して漢方治療が行われています。
漢方薬の効果が出るまでの期間
「漢方薬は長く飲まないと効かない」というイメージがあるかもしれません。しかし実際には、数時間で効果を実感できる漢方薬もあれば、数週間〜数か月かけてじんわり効く漢方薬もあります。効果が現れるまでの期間は処方される漢方薬の種類や症状の性質によってさまざまです。
例えば、風邪の初期に用いる葛根湯(かっこんとう)のような漢方薬は服用後1〜2時間ほどで発汗を促し症状を和らげる即効性を持つことがあります。一方で、慢性的な冷え性を体質から改善するような漢方薬では、効果を実感できるまでに数か月(およそ2〜6か月)かかるケースもあります。
一般的な目安として、急性の病気に対する漢方薬なら数時間〜数日で効き始め、慢性的な症状に対しては2〜4週間ほどで少しずつ効果が現れることが多いとされています。さらに2〜3か月継続することで「そういえば調子が良くなってきた」と効果を実感できるケースが多いようです。
高齢の方や症状が長年にわたる場合は、改善により長い時間を要することもありますが、実際には当院(漢方専門クリニック)ではほとんどの患者さんが2か月も続ければ何らかの症状改善を実感されています。漢方薬は即効型のものと体質改善型のものがあり、自分に合った処方で根気よく治療を続けることが大切です。
よくある誤解

- 漢方薬は効かない?
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いいえ、そのようなことはありません。漢方薬にもきちんと効果があります。
ただし、西洋医学のように「この病気にはこの薬」という一律の処方ではなく、患者さんそれぞれの体質・症状に合わせた処方(証の合わせ方)が適切でないと十分な効果が得られないことがあります。実際、「漢方を飲んだけど効かなかった」という方の中には、漢方の専門知識がない医師から画一的に処方され、自分の証に合っていなかったために効果が出なかったケースも見受けられます。
逆に言えば、自分の体質に合った漢方薬が見つかれば比較的早く効果が現れることが期待できます。漢方専門医のもとで証に合う処方を受ければ、「漢方は効かない」ということは決してありません。
- 漢方薬には副作用がない?
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いいえ、漢方薬にも副作用はあります。「漢方は自然のものだから安全で副作用がない」と思われがちですが、これは誤解です。
漢方薬もれっきとした医薬品ですから、証に合わない薬を飲めば体調に不調を来すことがあります。実際、漢方薬の副作用として湿疹、むくみ、胃痛、下痢などが起こる場合や、まれに肝機能障害や間質性肺炎など重篤な副作用が報告された例もあります。もっとも、漢方薬は一般に西洋薬に比べて副作用の出る確率は低い傾向にありますし、副作用が出ても服用を止めれば自然に治まるケースがほとんどです。
漢方薬は習慣性もほとんどなく依存の心配も少ないとされています。服用中に気になる症状が出た場合は自己判断で続けず、「薬を中止すれば副作用は治る」と考えて一旦服用を中断した上で、必ず処方した医師に相談してください。
漢方薬を飲み続けるためのコツ
漢方薬の効果を十分に引き出すには、ある程度の期間継続して服用することが大切です。しかし「味が苦手で続かない」「つい飲み忘れてしまう」といった声もよく聞きます。
ここでは、漢方薬を無理なく飲み続けるためのコツを紹介します。
- 服用タイミングを守る
- 漢方薬は体への吸収を良くするため、食前(食事の30分前)または食間(食後2時間後)に服用するのが基本です。医師から特に指示がある場合を除き、白湯または水で飲みましょう(濃いお茶やジュース、牛乳などは薬効に影響する可能性があるため避けます)。毎日決まった時間に服用する習慣をつけると、飲み忘れ防止にもつながります。
- 味や香りへの工夫
- 漢方薬特有の苦みやにおいが苦手な方は、飲み方を工夫してみましょう。例えば、服用前に少量の水または白湯を口に含んでおき、そこに顆粒の漢方薬を入れて一緒に飲み込むと、口の中に粉が残りにくく味も和らぎます。オブラートに包んで飲んだり、一度お湯に溶かしてから人肌程度に冷まして飲む方法も有効です。また、一部の漢方薬には錠剤タイプもあり、顆粒より匂いや苦味を感じにくいとされています。どうしても飲みにくい場合は、剤形の変更について医師や薬剤師に相談してみましょう。
- 心構えと継続のモチベーション
- 漢字のことわざに「良薬口に苦し」というものがありますが、漢方薬の苦味・香りにもちゃんと意味があります。「この苦味も体に効いている証拠」と前向きに捉えてみましょう。服用後に「体がポカポカ温まる」「肩のこわばりが軽くなった」「前より眠れるようになった」など小さな変化に気付くと、味への抵抗感も和らぐことがあります。効果を実感できるまで焦らずに、まずは数週間〜1か月程度は頑張って続けてみることが大切です。
- 生活習慣の見直し(養生)
- 漢方では薬を飲むだけでなく、生活習慣の改善(養生)も治療の一部と考えます。食事の内容を整える、体を冷やさない工夫をする、適度に体を動かす、睡眠リズムを整える…といったように、ご自身の体質に合った生活環境づくりを心がけましょう。例えば冷え症の方は入浴でしっかり体を温め、就寝時にも足先を冷やさない工夫をするだけでも違います。生活習慣が整うと体調も安定し、漢方薬の効果も高まり続けやすくなると言えます。
漢方と西洋薬の併用について
漢方薬は西洋薬と一緒に服用できるのでしょうか?
結論から言えば、多くのケースで漢方と西洋薬の併用は可能です。実際、関節リウマチの治療でも西洋薬で関節の炎症を抑えながら、漢方薬で冷えやむくみ・体のだるさなど全身の不調を和らげるといった形で両方を取り入れるケースが増えています。双方のメリットを活かすことで、よりバランスの取れた治療につながると考えられています。
また漢方薬は副作用が比較的少ないため、西洋薬の副作用で体調が不安定な方や体力が落ちてしまった方に対し、体調を整える目的で漢方を併用することもあります。例えば関節リウマチの患者さんで胃腸が弱い方に、胃を守る漢方を併用して西洋薬を飲みやすくする、といった工夫が行われることもあります。
ただし、漢方薬と他の薬を併用するときは、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。ほとんどの組み合わせは問題ないとされていますが、中には併用が禁忌(してはいけない)とされる組み合わせや注意が必要な組み合わせも存在します。例えばインターフェロン製剤を使用中の方には投与できない漢方薬があることが知られています。
また、漢方薬同士でも別の診療科から処方されたもの同士で成分が重複し、思わぬ副作用(むくみや血圧上昇など)を招く可能性もあります。複数の医療機関で薬をもらっている場合は、お薬手帳を活用して飲み合わせを確認してもらいましょう。
適切な管理下で併用すれば漢方と西洋薬は良いパートナーになりますが、自己判断で市販の漢方薬やサプリメント類を併用するのは避け、安全のため必ず専門家の指示を仰ぐようにしてください。
よくある質問(FAQ)
専門医への受診案内
漢方の効果を最大限に引き出し、副作用の不安を減らすためには、医師のアドバイスを受けながら治療することが理想的です。漢方に詳しい医師であれば、一人ひとりの証を正確に診断し、あなたの体質に合った漢方薬を選んでくれます。体質に合った処方が得られれば無駄なく効果が現れやすくなり、副作用のリスクも最小限に抑えることができます。
関節リウマチの患者さんを含め、漢方治療に関心のある方はぜひリウマチ科や漢方専門の医師に相談してみてください。専門医のサポートのもとであれば、漢方と西洋医学を上手に併用しながら安心して治療を続けることができ、結果的に症状の改善や体質の向上につながりやすくなります。困ったときはお一人で悩まず、プロの力を借りて、あなたに合った漢方治療を取り入れてみましょう。
漢方と西洋医学の “いいとこ取り” をしながら、心も体も負担の少ない治療を一緒に目指していきましょう。

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