「うちの子、足が痛いって言ってるけど…ただの成長痛かしら?」
そう考えて様子を見る親御さんは少なくありません。しかし、2週間以上も痛みが続いていたり、朝起きたときに関節がこわばっていたりするなら、「若年性特発性関節炎(JIA)」という病気の可能性もあります。
JIAは、子どもに起こる関節の病気のひとつ。進行すると関節の変形や、将来にわたる生活への影響を及ぼすこともあるため、早期発見と治療がとても大切です。
若年性特発性関節炎(JIA)とは?
- 子どもに起こる慢性的な関節炎
- 原因不明の自己免疫異常によって関節に炎症が起きる
- 16歳未満で発症し、6週間以上症状が続くのが特徴
JIAとは「Juvenile Idiopathic Arthritis」の略で、「若年性特発性関節炎」と訳されます。関節に炎症が起こることで、腫れや痛み、動かしにくさが出てきます。
“特発性”という言葉は、「はっきりとした原因がわかっていない」という意味で、現代の医学でも、JIAの原因は完全には解明されていません。ただし、体の免疫が自分の関節を攻撃してしまう「自己免疫反応」が関係していると考えられています。
JIAの主な症状
- 関節の腫れや痛み、熱っぽさ
- 朝のこわばり(モーニングスティフネス)
- 発熱、発疹、リンパの腫れなどの全身症状
- 疲れやすさや元気がない様子
JIAの症状は関節だけでなく、全身にもおよぶことがあります。とくに朝の起床時に、関節がこわばって動かしにくい状態は、JIAに特有のサインです。これは「モーニングスティフネス」と呼ばれます。
また、全身型のJIAでは、毎日同じ時間に高熱が出たり、発疹が出たりすることもあります。リンパ節が腫れたり、肝臓や脾臓が腫れるケースもあり、風邪や感染症と見分けがつきにくいことがあります。
JIAと成長痛の違い
- 成長痛は夜に痛むが、腫れや熱感はない
- JIAは朝にこわばりがあり、腫れや熱があることも
- 2週間以上続く痛みは医師の診察を受けるべき
子どもの足の痛みといえば「成長痛」と思いがちですが、JIAとの見分けが重要です。成長痛は夕方から夜間にかけて痛み、朝になるとケロッとしていることが多く、関節の腫れや熱はありません。
一方、JIAは関節が実際に腫れたり、熱を持っていたりするのが特徴で、痛みが続く期間も長いです。2週間以上関節の痛みや腫れが続くようなら、リウマチ科や小児科での受診がすすめられます。
JIAのタイプ
- 【全身型】:関節炎に加えて発熱・発疹・内臓症状など全身に症状が出る
- 【少関節型】:発症6か月以内に4か所以下の関節に炎症(3〜4歳女児に多い)
- 【多関節型】:5か所以上の関節が腫れる(左右対称に出ることが多い)
- 【乾癬性関節炎型】:皮膚の乾癬と関節炎が同時に起こる
- 【付着部炎関連型】:関節の付け根部分(アキレス腱など)が痛む
JIAはひとつの病気ではなく、いくつかのタイプに分類され、それぞれ治療法も異なります。全身型は発熱などの症状が強く、少関節型は比較的軽症である一方、多関節型は進行すると関節の変形につながることもあります。
診断に使われる検査
- 血液検査(CRP、赤沈、抗核抗体、リウマトイド因子など)
- レントゲン、超音波検査、MRIなどの画像検査
- 症状の持続期間や、朝のこわばりの有無なども診断のカギ
診断では、まず血液検査で体の中の炎症の有無や、自己抗体の有無を調べます。ただし、血液検査だけではJIAかどうかをはっきり断定することはできません。
そのため、画像検査や問診、診察を含めた「総合的な判断」が大切です。小児科やリウマチ専門医の受診がすすめられます。
JIAの治療法と日常のケア
- 痛みや炎症を抑える薬(NSAIDs)
- 病気の進行を抑える薬(メトトレキサートなどのDMARDs)
- 生物学的製剤(バイオ製剤):効果が高いが注射が必要
- 理学療法(リハビリ)やストレッチで筋力を維持
- 疲れすぎない生活リズムも大切
治療の中心は「薬物療法」です。初期には痛み止めのような薬を使いますが、進行を抑えるためには抗リウマチ薬(DMARDs)や、生物学的製剤(バイオ)といった治療薬が必要になることもあります。
たとえば、「メトトレキサート」という薬は、JIAの進行を抑える効果が高く、保険診療で処方されます。また、バイオ製剤は2023年時点で複数種類が使われており、皮下注射や点滴による投与が必要です。
また、関節を動かす力を維持するために、日々の軽い運動やストレッチ、無理のない範囲での活動も大切です。
早期発見・早期治療がカギ
- 関節の変形や機能障害を防げる
- 子どもの生活の質(QOL)を守れる
- 精神的な不安や学校生活への影響も軽減
JIAは進行すると、関節の変形や歩行の困難につながることがあります。しかし、早期に発見して適切な治療を開始すれば、普通の子どもと同じように学校生活や将来を送ることができるようになります。
日本リウマチ学会によると、「発症から6か月以内の治療開始」が予後を大きく左右するとも言われています。親が早めに気づくことが、子どもの未来を守ることにつながるのです。
家族にできるサポートとは
- 痛みやつらさを理解し、共感してあげる
- 病院への同行や服薬管理をサポート
- 保育園・学校の先生に病気を説明して協力を依頼
- 医療費助成制度や障害者手帳などの福祉制度を活用
子どもは自分の症状をうまく言葉にできないことも多いため、家族の観察と寄り添いが大切です。日々の症状を記録する「関節日誌」をつけることで、診察時にも役立ちます。
また、経済的な不安を減らすために、各自治体が提供している医療費助成制度や、障害者手帳の取得による支援を受けることも可能です。
まとめ
- 若年性特発性関節炎(JIA)は、子どもに起こる慢性関節炎
- 成長痛と見分けがつきにくく、2週間以上痛みが続くときは要注意
- 早期に発見すれば、将来的な関節の障害を防げる
- 治療は薬物療法が中心で、生活リズムや運動も大切
- 家族のサポートや社会制度の活用が回復を助ける
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